「2.こだわりレビュー」 2005年02月03日
一読して考えたのは、「中学生の性教育の副読本にしても良いんじゃないの?」ということでした。これだけの内容を真面目にストレートに解説した本はありがたいものです。この手の本は一歩間違えると若い人にとってはギャグになりかねないのですが、本書は素晴らしいバランス感覚で“優しい真面目さ”を貫いています。
この“優しい真面目さ”というのがポイントで、変に10代に阿(おもね)らずに本音の言葉でノウハウを語っているおかげで、甘いだけの肯定論を連ねるでもなく、ズケズケと厳しいことを言うのでもない、「話のわかるお姉さん(いや、著者はいい年のオバサマですが(笑))から真面目で素敵なお話を聞く」という独特の雰囲気をつくり出すことに成功しています。
以下は「男性の性器が入るとき、すごく痛いって聞きますが、本当に痛いのですか?」という女子高生からの質問に答えた文章です。
「あなたは、自分の性器をよく知っている?」
セックスの痛みが怖いという女性には、こう質問することにしています。
「自分で鏡で見たり、指で触ってみたりできますか?」
自分が自分の性器にしっかりなれていないことが、触られることへの恐怖感や不安感を大きくしてしまうと思うからです。まず、自分で自分の性器になれる作業を繰り返したうえで、彼にあせらずゆっくり時間をかけてもらってください。そうすれば、初めてのセックスでも、さほど痛くはないでしょう。(43ページ)
痛いか痛くないかという質問に直接答える前に、「自分の性器を見たり触ったりしたことがあるか?」と問いかけているのですが、実はこの問いの先には「自分で気持ち良いかどうかが判らないことは、相手にも判らない」という、一見当たり前のようで、その割に意識されることの少ない事項があるということを暗に示しています。
「女性の体は男性が“開発”するもの」ということが一般によく言われていますが(女性を侮辱した言い様ですが)、実際には当の女性自身が「どうすれば気持ち良いのか」を理解していないと、大抵は男性の独りよがりになってしまうものです。
女性の側も「彼が気持ちよくしてくれるわ」と思っているだけでは深い快感には至れないということを、著者も色々な角度から解説しています。そして何よりも、「セックス(性)はコミュニケーションである」ということを教えてくれます。
細かいことに逐一答えているようでいて、実は一本スジの通った想いを読者に伝えようとしている、そういう特徴が感じられるのです。その想いが読者には“真面目な優しさ”として伝わるのではないか、そんな印象です。
さて、著者は“大人の性”に対しての嘆きも見せており、耳の痛いところでもあります。
ただただ「若い人はセックスをしてはいけません」とさえ言っていれば、いいのだとする大人たち。その大人たちさえ、手本にすべき豊かな性を実践している人は、多くありません。どんなに社会的地位の高い人でも、お金のある人でも、ワンパターンの惨(みじ)めな性しか持ち得ていません。その結果、いつの間にか、若者たちはビデオを手本に行動してきたのだと思います。(4ページ)
「セックスの最後には女性の顔に射精するものだ」と誤解していたという青年の話は、よく笑い話の種にされますが、性の情報源が偏っている現代では止むを得ないのかもしれません。そしてその一因は、大人側の経験に即した情報を若者に伝えていくための仕組みが無いことにあるのではないでしょうか。
本書ではその仕組みが無いこと、仕組みが出来てこないことへの対策として、「性はコミュニケーションである」ということを繰り返し述べ、パートナーとの言葉を交えたセックスコミュニケーションを薦めています。
多くの若者たちに接して、会話もなく、ただ体だけふれあっている人たちがあまりにも多いことに苛立(いらだ)ちすら感じています。避妊の話しさえできないままにセックスし、結果として妊娠してしまう。自分の命がかかっているくらい大切なことなのに、どうして何の話し合いもしないのでしょうか。
妊娠についての不安や、何が自分にとって気持ちがいいことで、何が不快なことなのかについて、お互いに話題にできれば、セックスはもっと自由に楽しく豊かになると思うのですが。実行する人は本当に少ないですね。
さて、視点を変えて、本書の秀逸な点として挙げられるであろう、真面目なストレートさが生み出す「若者への価値ある情報」について触れてみましょう。大人の中には、自分もこういうことを中学生くらいのときに知っていればその後の性生活が違っただろうなあ、という人も多いと思います。
女性の小陰唇は、初経が始まる少し前から、ホルモンの影響を受けて発育します。普通、よほど太った人でない限り、しわしわになって大陰唇からはみ出してきます。ジーンズの真ん中の縫い目があたって痛いとか、自転車に乗るとき変だとか、時たま厄介(やっかい)に感じることもあります。でも、ジーンズをはくときに少しずらしておくなどすれば、気にならなくなります。みんな人知れず工夫していることなのです。(59ページ)
ペニスを挿入するときは、ゆっくりとお互いの表情を確認しながら、少しずつ入れてもらってください。(中略)膣の中は温かくて、ペニスがふんわり包まれて、男性はきっと感激すると思います。挿入したらいきなりせっせと動き出さずに、しばらくじっとしたまま、ペニスが入っている感覚や精神的な感動を味わってください。そして、感激した気持ちをパートナーに言葉で伝えましょう。
初めてのセックスは、後々まで影響を及ぼしてしまうので、慎重に、大切に。
挿入だけで終わりにしてもいいのです。一気に射精までいこうと無理をしないことです。(91ページ)
いろいろな体位を試していくことのメリットは、一つには社会的に規制されている、はしたなさとか羞恥心(しゅうちしん)などという固定観念を、一つ一つ剥(は)ぎ取っていくことにあります。ふたりの間でそれが十分にできるようになると、セックス自体が開放されてタブーがなくなり、どんどん自由になって、セックスがのびのびとした楽しいものになっていくはずです。(104ページ)
これらはほんの一部ですが、「ああ、自分もこういうアドバイスを受けたかったなあ……」とため息をついてしまう内容のオンパレードです。それだけに、若い人たちにぜひ読んでもらいたいという思いも強いのです。ちなみに「ほほう、こういうことも書いてあるのか」と思ったのは、「愛咬&爪を立てる」、「お尻に入れたいと言われたら」などの項目です。
例えば後者では、肛門も粘膜だから気持ちのいい場所だということをハッキリ示した上で、お互いの間でかなり具体的な制限(指で触る、キスまで、指を入れる、ペニスを挿入する)を決めておくことを推奨しています。やはりここでも基本は「パートナーと話し合うこと」なのです。
「お尻(肛門)を愛撫したいなんて言ったら嫌われるかも……」という懸念の存在すらあっけらかんと飛び越えて、パートナーとの間にタブーはなく、セックスは相互理解の上に自由に広がるものだという著者の姿勢には、大人が読んでも目が覚め、励まされるものを感じます。と同時に、自分が知っていることや体験してきたことの“理解・受け入れ方”の偏りにもまた、気付かされるのです。
言うまでもなく現代は情報の洪水状態です。しかし、情報の絶対数が増えているということは、有益な情報も増えているということでもあり、実際、本書はそんな情報のひとつと言えるでしょう。これを読んでいる学生のキミ、エロ本も大事だけれどこういう本も読んでみて下さい。
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