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出版社/著者からの内容紹介
女の演技を見抜く法、性力が減退したら肝臓病を疑えなど、男と女の性を生理学的な面から見直す、大人の疑問に答えるSexサイエンス。性愛の不可思議なエロスの世界を解く。
抄録(「電子書店パピレス」より)
膣けいれんは本当に起こるのか
男女が合体をしたまま、救急車で病院へ運ばれるなんてことが、本当に起こりうることだろうか。
そう疑問を持つ人もいるようだが、これは、私の知人の病院で起こった例である。
観光バスの中年の運転者と、うら若いバスガイドが、下半身の衣類を脱ぎ捨て、合体した状態で運び込まれてきた。
男女とも、顔には苦痛の表情を浮かべ、女性の脚は、硬直し、太股はきつく閉じていて、からめた男性の脚を、強烈にしめつけている。
二人を離そうとしたが、局部は、容易に分離しない。
けいれんを押さえる薬と、精神安定剤などの投与で、二人が離ればなれになったのは、数十分後であった。
まさか。
と首をひねる人がいても不思議ではない。性体験のある男女なら理解出来ることだが、とても、女性性器、とくに膣に、それほどの男性のペニスを補捉して離さないだけの、パワーがあるとは信じ難い。
だが、実際に膣けいれんが、突然、女性性器を襲うことがあるのだ。
この運転者とバスガイドの例のように、女性の不安感がつのる場所での性行為では、その危険は高まる。
おそらく、乗客のいなくなったバスのなかで、二人は意気投合して、セックスに及んだものなのだろう。
だが、女性の心には、「人に見られる」「こんなバスのなかで」「車内恋愛が発覚したら首になるかもしれない」「妊娠したらどうしよう」など、さまざまな不安があったことは、容易に想像出来ることだ。
つまり、性行為をするには、あまりにも環境が悪すぎた。
その不安感や恐怖心が、膣けいれんという形で、女性を襲ったのである。
膣けいれんの原因は二つある
正式には、膣痙《ちつけい》(Vaginismusワギニスム)と呼んでいるが、根本的な原因は、膣のまわりの筋肉が、自分の意志ではコントロール出来ない状態で、けいれんする、いわゆる不随意痙攣にある。
主として、けいれんするのは、膣の入口をとりまいている、膣括約筋である。
よく、しまりが良いとか悪いとか、男性は勝手なことを云うが、そのしまりに関係しているのが、この括約筋である。
三段じめ、きんちゃくなどという、名器の代名詞になっている、膣の強い収縮に、男はあこがれるものだが、こうした名器が、もし存在するとなれば、その女性のからだは、並はずれた、強靱《きょうじん》な膣括約筋を持っているということになるだろう。
もう少し、名器の話をしよう。「名器は、火鉢の灰を散らす」という話をこれに近い実話が、私の周辺にあった。
「先生、私は絶対に避妊には自信があるの。終わると、すぐお風呂に飛び込むでしょ。そして、お湯を吸ったり吐いたりして、きれいに洗滌《せんじょう》してしまうの。だから、いままで一度だって、失敗したことがないのよ」
歳は三十代の半ば、彼女は豊満な胸を突き出すようにして、自信たっぷりに云った。
「それは、あぶないんじゃないの」
そう忠告したが、
「ううん、それが、最高の避妊法よ。ピルもコンドームもいらないわ」
彼女は、耳を貸そうとしない。
たしかに、お風呂に入った時など、膣が水を吸ってしまうという現象はあるにしても、彼女のように、水を吸ったり吐いたり自由自在に出来るとすれば、そうとうな、収縮力を、膣括約筋が持っているということになるだろう。
火鉢を跨いで、灰を散らすことが出来るとすれば、これも人並はずれた、筋肉の働きによると考えざるを得ない。
バナナを切る、タバコを吸うといった一種の芸を売物にしている女性の伝説もあるが、これも、同類の話である。
実際に存在することは確かなようだが、その確率は、おそらく百万人、二百万人に一人という、きわめてまれな例ではないかと思われる。
後日談─―
お風呂避妊法の女性だが、結局、妊娠してしまった。
著者について
志賀 貢(しが みつぐ)
1935年、北海道生まれ。医学博士。
開業のかたわら、小説やエッセイ、テレビ、雑誌などで活躍。専門的な医学知識を軽妙な文章と語り口でやさしく解説することで人気がある。
著書に「女医彩子」シリーズ、「健康ことわざ辞典」、「アレルギーが消えた」、「連鎖ミス」、「誤診の壁」、「脳死病棟」、「覚醒麻酔」など多数。