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本書は、そもそも明治時代に唱導された“一夫一婦制”は、単なる精神論や道徳談義ではなく、「総体日本人」の改良という国家戦略と共存していたことを指摘しており、恋愛結婚とそれをめぐる言説が実は、優生学という危険な部分と表裏一体であったことを検証したもので、このことから伺えるように本書のテーマは非常にスリリングなものです。
森有礼の「血統」の概念、澤田順次郎の性への発言、永井潜の数々の動きなどを取り上げながら、優生学の展開と国策を追っています。恋愛という現象・行為が、多様な人々の思惑と明確な意思によって優生学という思想に組み込まれていくプロセスは、現在の“あたりまえ”を揺さぶってきます。
著者の論旨・論理は明確であり、文章は軽妙ですらあります。それだけに説得力とリアリティをもって「明治〜戦中、そして戦後」の優勢思想の流れがよみがえって来ます。そして、現在の生殖医療がはらむ問題点の数々が、また別の見え方をし始めるのに気付くはずです。
そして、うがった見方をすれば、「現在の社会において著者が優生思想の危険性を熱心に啓蒙するのは、そこにどんな隠された意図があるからなのか」と訝しく思ってしまうほどに、本書はショッキングな内容なのだと言えます。
「<幸せな恋愛結婚>という穏やかなイメージを胸に抱きつつ、同時に私たちが人間の優生学的な選別と排除を推し進めてきたという現象を、ごまかすことなく見つめなければならない」という著者の言葉が重くのしかかってきます。((C) netman 「性の本棚」)
出版社/著者からの内容紹介
夫婦別姓論議や少子化、不倫、熟年離婚など「結婚=家族」という主題が、ここ十数年メディアを賑わしてきた。だが、こうした話題の前提として、「一夫一婦制」自体が論議されることがなかったのはなぜか?そもそも明治期に唱導された一夫一婦制は、単なる精神論や道徳談義ではなく、「総体日本人」の、改良という国家戦略と共存していた。
本書では、一夫一婦制と恋愛結婚をめぐる言説が、優生学という危険な部分と表裏一体であったことを検証し、恋愛・結婚・家族という制度の「近代性」の複雑さを明らかにする。
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序章 “恋愛結婚”の時代
第1章 制度としてのロマンチック・ラブ―日本における“恋愛結婚”への助走
第2章 「一夫一婦制」への遡行―明治期における恋愛・結婚・国家
第3章 一夫一婦制という科学―「男性の体液が女性の体液に混じる」?
第4章 人類のために恋愛を!―家庭・フェミニズム・優生学
第5章 恋愛から戦争へ―戦前期における「優生結婚」の模索
終章 “恋愛結婚”の方へ